理事長所信

<はじめに>



 1949 年「新日本の再建は我々青年の仕事である」という志を立て、戦後の混迷期に東京で青年会議所の運動は始まりました。それから 10 年後の 1959 年、青年会議所の三大目標を初めとするその趣旨に賛同し設立されて以来長きに亘りそれぞれの時代の課題解決に熱い想いをもって挑戦し続けてきた三木青年会議所は、本年、創立 65 周年という節目の年を迎えます。我々は、まちの未来を想い今日まで存続してきた三木青年会議所の魂を受け継ぎ、JC ならではの視点をもって我がまち三木の正しい発展に寄与していかなければなりません。
 2020 年初頭より始まったコロナ禍も、昨年、新型コロナウイルスの感染症法上の位置付けが季節性インフルエンザと同じ 5 類に移行されたことによりさまざまな制限が緩和され、経済的にも社会的にもコロナ禍以前の暮らしに戻りつつあります。JC においても会議や事業が現地での開催に戻ってきていますが「制限が緩和されたから」という理由だけでオンライン開催を否とする考え方には疑問符が打たれます。コロナ禍により多くの犠牲者が出たことは紛れもない事実であり、一刻も早い事態の収束と制限のない暮らしを願うことは当然のことだとも思います。しかしながら我々は青年経済人としてこの間に革新的な発展を遂げた人工知能やデジタル技術等に起因するパラダイムシフトに目を向け、今までの暮らしを一段階も二段階も進化させていく必要があるのではないでしょうか。
 「あなたの暮らすまちから JC がなくなるとどうなりますか?」私がこの問いを初めて聞いたのは 2017 年度の全国大会における卒業生代表スピーチでした。当時私は「何も変わらない。」とだけ心の中で思ったように記憶しています。「JC もある時代」とよく耳にしますが、コロナ禍を経て、今まで以上に JC の真価が問われだすように感じます。「JC は課題解決ありきの意識変革団体である」ということをよく聞かされましたが、今後の JC は「きっかけ」を作るだけではなく、人の行動をも変えるような運動を展開していかなければなりません。
本年度は、そんな「JC もある時代」に終止符を打ち超現実主義の「JC がやる時代」でまちの未来を切り拓き、まちに必要とされる団体として邁進してまいりましょう。

<恩送りの65周年>


 現在も我々が、三木青年会議所として活動できているのはなぜか。それは設立趣意書にある三木青年会議所創始の精神に共感し、信頼できる仲間と幾多の試練を乗り越え、今日まで三木のまちのために尽くしてこられた先輩諸氏の存在に他なりません。今後の三木青年会議所を担う我々は、今一度この事実に感謝し、後人のために今為すべきことを考え行動する必要があるのではないでしょうか。
 本年、三木青年会議所は創立 65 周年を迎えますが、先の 60 周年を知る会員は多くありません。これは歴が長い会員がここ数年で一気に卒業したことと、入会から卒業までの年数が短くなっていることに起因します。過去を知り伝えることができる会員の急激な減少に加え、コロナ禍による交流の機会の減少が拍車をかけ、三木青年会議所の古き良き伝統は加速度的に形骸化してしまっているように感じます。我々は今一度三木青年会議所のアイデンティティーと向き合い、共感を育んでいく必要があるのではないでしょうか。
 また、今を生きる我々にはこの活動を次代へ繋いでいく責任がありす。JC 活動の中で「~の職をお預かりしている」という表現をよく耳にします。「預かる」には「任せられて、責任をもって物事を取りしきる」「頼まれて、返す時まで責任をもって守る」という二つの意味があります。挨拶の場面では前者の意味で発せられている言葉であることがほとんどだと思いますが、JC において重要なのは後者であると私は考えます。単年度制の役職はあくまで「預かっている」に過ぎず、組織に「返す」べきもの、言い換えれば次代へ「送る」べきものです。これまで先輩諸氏がそうしてきたように、未来の三木青年会議所に希望を抱き使命に挑んでまいりましょう。

<未来への架け橋>



 三木青年会議所は 60 周年を迎えた年に 5 ヶ年計画として中期ビジョンを策定しました。策定の翌年からコロナ禍となり、当初思い描いたものからの軌道修正を余儀なくされた部分もありましたが、本年度はその最終年度として、過去 5 年間を振り返り次の 5 年を見据えた取り組みを行っていく必要があります。
 JC は単年度制の組織であり、時代に合わせた課題解決ができることが強みである一方、その年で終わってしまう単発の事業が多いがゆえに持続的に社会にインパクトを与えていくことが難しいという事実があります。いくら多くの参加者を動員し、社会にインパクトを与えることができる事業を行っても、そこに持続性がなければ我々はイベント屋としてしかみられることはないでしょう。では、そのようにならないためにはなにが必要なのか。まずは、会員の、組織の、まちの中期的な課題を明確にし、会員間で共通の認識とする必要があると私は考えます。そして、単年度で変えること、解決することが難しいポイントに集中的かつ継続的にアプローチすることができる仕組みが必要なのではないでしょうか。5 年後のあるべき姿を想像し、夢を抱き、必ずそこにたどり着くことができるよう緻密に計画を練り、地域に対し今まで以上にインパクトを与えることのできる組織に進化してまいりましょう。

<拡大コンフィデンス>


 「あなたはなぜ JC 活動をしていますか?」この問いに答えることはできるでしょうか。JCをやる理由、それは十人十色様々でありますが、重要なことは目的意識をもち、自信をもって取り組むことです。会員拡大で重要なことは会社の営業活動と同じです。まずは JC という組織が提供できるサービスを再認識し、それにより自分がどのように成長できたのかを考察し自分の中の JC を確立させることが必要です。どんな目的をもって取り組み、どんな体験をして何を得たのかは人により様々であるという点において、会員個々人はそれぞれの道のスペシャリストです。実体験からくるエピソードや夢を語り、熱意をもって三木青年会議所を伝えましょう。その武器は同様の課題をもつ拡大対象者に必ず刺さります。拡大を他人事にするのではなく、会員一人ひとりが自分にしかできない拡大の機会があることを自覚し、全員で拡大活動に取り組んでまいりましょう。
 また、近年、日本青年会議所において、会員拡大の課題の一つとして退会者数の増加が重要視されております。当青年会議所においても退会者は増加傾向にあり解決すべき課題であると考えます。原因は人により異なりますが、退会しようとする会員に如何に寄り添い意識を変革することができるかも重要な拡大活動であると考えます。だれ一人取り残さず、すべての会員が活躍できる内部環境を整えていきましょう。

<Value of Miki JC>



 JC において広報とブランディングがセットになっているケースをよく目にしますが、広報でなされるアウターブランディングは二次的なものであり、広報だけで組織の価値を高めていくのは不可能であると考えます。ブランディングとは共感性を高め、付加価値を創造し、他との差別化を行うことです。まずは、組織に所属する会員間でインナーブランディングを強化していく必要があるのではないでしょうか。
 コロナ禍以降、会員間での懇親を図る場の減少がコミュニケーション不足へとつながり、所属する「人」のこと「組織」のことをよく知らないままタスクを課す、または、課されるようなことが多いように感じます。JC は義理の掛け合いと言われますが、もっと積極的な交流を行い「あなたがそう言うのなら、やりましょう。」と言い合える関係性を、まずは内から築いていくことが重要です。そうすることで会員エンゲージメントはさらに高まり、人のため、組織のため、延いてはまちのために行動できる JAYCEE へと成長していけるのではないでしょうか。
 ではどのような広報を行うと組織の価値は高まるのか。まずは我々が発信すべきコンテンツは「何」で対象は「誰」か、シンプルではありますがこの二点についてとことん追求する必要があるのではないでしょうか。JC は広報が下手な団体であると耳にすることがありますが、それは広報を行う理由を明確にできていないということ、また、自分本位な思いの押し売りになってしまっているということが大きな要因であると考えられます。受け手の意識をどのように変えたいかを真剣に考え、相手本位な発信を心がけることでファンを増やし、三木青年会議所の価値を高めてまいりましょう。

<おわりに>



『はきものをそろえる』
はきものをそろえると心もそろう 心がそろうとはきものもそろう
ぬぐときにそろえておくと はくときに心がみだれない
だれかがみだしておいたら だまってそろえておいてあげよう
そうすればきっと 世界中の人の心もそろうでしょう

 これは長野県の円福寺というお寺の藤本幸邦という方が作った詩です。私がこの詩を知ったのは小学生の時、当時の三木 JC の事業に参加し伊勢の修養団で集団生活を行った時です。この詩を知ってから 30 年近く経過しますが、特に一行目は私の胸に強く刻まれ、その時々の自分の心の状態を見つめ直すきっかけとなっています。そんな経験を与えてくれた三木 JC で今私は活動させていただけています。与えられる側から与える側へ、この連鎖こそが組織を、まちを継続的に発展させていくには必要不可欠なのではないでしょうか。
 この組織は人の人生に前向きな変化を与えることができる底力をもっています。VUCA 時代とは言われますが、偏見を捨て、個人の、組織の可能性を解き放ち、自身の未来を、組織の未来を、まちの未来を本気で考え、限りある時間をともに駆け抜けてまいりましょう。
 
基本方針
1.65 周年記念式典の開催
2.三木 JC 中期ビジョンの検証と 70 周年に向けたビジョン策定
3.三木青年会議所のアイデンティティーの探求
4.自信をもった拡大の実践
5.三木青年会議所の価値を高める広報
6.組織力を高める交流